ペット探偵が教えるイヌ・ネコの探し方


愛するイヌ・ネコがある日突然行方不明になったら? 最近ではGPSを搭載したトラッカー(追跡装置)もあるようですが、まずは自分で探すという方が多いことでしょう。「ペット探偵」として名高い藤原博史さんの著書「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―」には、イヌ・ネコを探すヒントがたくさん記されています。

 

 

あれは20年ほど前。当時飼っていたラブラドール・レトリバーのマルディ(雄)が自宅を抜け出し、いなくなったことがありました。昼間は庭に出していたので、夜ごはんをあげようと呼んだところ、姿が見えなくなっていたのです。門はぴたりと閉じていたので、生け垣のすき間から逃げ出したのでしょうか。

そのとき私がとった行動は……まずは大声で名前を呼びながら近所を走り回りました。もっとも恐れていたのは、交通事故に遭うこと。次に、誰かに誘拐されたのでは、ということ。そして、保健所に収容されて殺処分されてしまうのでは、ということ。とにかく悪い想像ばかりが頭の中でグルグルとまわり、半狂乱になりました。

ひとしきり近所を探し、思いつく場所(たとえばマルディを連れて行ったことのあるお店など)に連絡し、それでもいない……時間はもう深夜です。当時はまだインターネットも一般的ではなかったため、どうすればよいのか途方にくれた私は思い切って110番に電話をかけました。

「事件ですか、事故ですか」という冷静な問いに、私は半泣きになりながら「うちのイヌがいなくなりました」と告げました。いま思えば、そのような訴えに警察が耳を貸すはずないのですが、その担当の方はとてもやさしく「それは心配ですね。近所の交番に連絡を入れておくから、もし届けられたら連絡をさせます。あんまり心配しないで今夜はもうやすんでください」と言ってくれたのでした。

そのアドバイスはとてもうれしかったものの、愛犬がいなくなった不安を解消できるわけもなく、ベッドに入ったものの朝まで眠れなかった……そんな不安な思いをしたことがあるのは私だけではないでしょう。

『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―』(新潮新書)

『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―』(は、ペット探偵として知られる藤原博史さんが迷子になったイヌやネコと家族をめぐるエピソードを紹介してくれている奮闘記です。本書にはペットを愛するすべての人に役立つノウハウがいくつも明かされているので、ここで3つのポイントに分けてご紹介しましょう。

 

1.イヌは「線」で、ネコは「面」で探す

同じペットでもイヌとネコでは移動の速度や仕方が異なるため、捜索するときもネコならネコの目線で移動する動線を探索するのだそう。たとえばイヌは数百メートルを数十秒でかけぬけてしまうため、近所にビラなど掲出してもあまり効果がない。反対にネコは高所へ上がったり、すき間にもぐりこんだりと三次元的な動きをするため、迷子になってから長時間経っても近距離に潜んでいる可能性が高いのだとか。

神奈川県から大分県に引っ越した際、連れだって脱走したコロラ(左)とギャルソン(右)。それぞれ196日後と210日後に見つかった。

 

2.ツールやビラは効果的に使う

藤原さんは捕獲機、動体感知カメラ、マイクロスコープなど多くのツールを駆使して捜索するものの、ネコのケースでとくに効果があるのは「チラシ」。ポイントは「文字を少なく、写真を大きく」。かわいい写真を選ぶのではなく、身体の特徴がよくわかるものを使用するのが重要。時間が経ってもチラシをたよりに情報が入ることが多いそう。

チラシは水に強い素材で作ることも大切。手書きもよいけれど印刷所に頼むほうが簡単。

 

3.秘められた人間関係

あるヨークシャ・テリアが行方不明になり、藤原さんが探していたところ「似たイヌを保護している」と情報が入ったのは20キロも先のとあるお宅だったとか。さっそく見に行ってみれば、まさにその犬は探していたヨークシャ・テリア。保護してくれた人に御礼を言いつつ事情を聴いてみれば「このイヌは私ではなく、私の姉が保護したんです。飼い主さんがどうやら捨てたらしいので『あなたの家で飼わないかしら』と連れてきましてね」とのこと。

それなら、そのお姉さんはどこで保護したのかと住所を聞いたところ……なんと、もともとヨークシャ・テリアを飼っていたお宅の隣人であった、という驚きの事実が明らかになったのだそうです。もちろん飼い主はイヌが行方不明になった際「うちのコを見ませんでしたか?」と尋ねているそうで、つまりその隣人女性は、隣の家のイヌだと知ったうえで連れ去り、20キロも離れた妹に渡しているということになります。これはもう、事故というより、事件? ペットの行方不明には、意外にも身近な人による誘拐というケースも多いのだそうです。

ペットレスキューの藤原博史さん。20年間の活動で3000件以上の依頼を引き受け、およそ7割のペット(ネコだけに絞れば8割)を依頼者の元へ戻してきた。

 

本書には行方不明になったイヌ・ネコの物語だけではなく、藤原博史さんがペット探偵になった経緯も綴られています。小さい頃から動物が好きすぎて家族や学校に迷惑をかけ、いわゆる不良少年となった藤原さんは中学生にして自宅にも帰れず、路上生活者になってしまいます。その後、レストランのウエイター、クルマエビ漁師などいくつかの仕事を転々としていたころ、不思議な夢をみたのだそう。

それは「自分がペット探偵と呼ばれる存在になり、行方不明のペットたちを探している夢」でした。「ものすごくリアルだった」という夢をみたあと、「これこそ自分の仕事だ」と確信したのだそうです。不思議なこともあるものですが、その後の20年間の活躍をみれば、まさに正夢だったに違いありません。

 

ペット探偵 PET RESCUE
https://www.rescue-pet.com/


Text by Miyako Akiyama

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